はてなブログがサービス開始から10周年ということで、特別お題キャンペーンというものを実施しているそうです。
ブロガーさんたちみんなで共通したテーマについて書くという、「お題」のシステム。
挑戦するのは初めてですが、ちょっと参加してみます。
はてなブログ10周年特別お題「好きな◯◯10選」というお題に乗っかって、
「好きなしかけ絵本10選」を。
個人的な好みで選んだマイ・ベストですが、皆様にもおすすめできる名作が並んだと思います😊
その前に、初めて当ブログをお読みくださっている方にむけて、簡単に自己紹介をしておきますね。
私は昔から絵本が好きで、特にしかけ絵本については自分で創作もしています。
しかけ絵本1,800冊を蔵書する三条市立栄図書館(おそらく蔵書数日本一)の近くに住んでいることもあって、読んでいるしかけ絵本の数はかなり多いと思います。
ただし、自分に子どもはいないし、子どもや本に関わる仕事をしているわけでも、絵本を体系的に勉強したわけでもありません。
単に自分の興味のままに読んだり集めたりして少し詳しくなった、「ただの絵本好き」です。
そんな私が選ぶ「好きなしかけ絵本10選」。どうぞご覧ください。
(お気に入りばかりなので、ランキングでなく順不同です)
※タイトル下の《》内はしかけに使われている主な技術を私見で記載しています
- 1.Robert Sabuda『The 12 days of Christmas』《ポップアップ》
- 2.David A. Carter『BLUE 2』《ポップアップ》
- 3.アン・ジョナス『光の旅 かげの旅』(内海まお訳、評論社)《だまし絵》
- 4.よねづ ゆうすけ『にじいろカメレオン』(講談社)《円盤、プルタブ》
- 5.Matthew Reinhart『Transformers: The Ultimate Pop-Up Universe』《ポップアップ、プルタブ》
- 6.五味 太郎『まどから おくりもの』(偕成社)《穴あき》
- 7.エリック・カール『パパ、お月さまとって!』(もり ひさし訳、偕成社)《めくり、ポップアップ》
- 8.Marion Bataille『ABC3D』《ポップアップ》
- 9.アン・グッドマン/ゲオルグ・ハレンスレーベン『ペネロペ ゆきあそびをする』(ひがし かずこ訳、岩崎書店)〈うっかりペネロペしかけえほんシリーズ〉《プルタブ》
- 10.わらべきみか(絵)/斉藤幸一(ポップアップ)『とびだす!うごく!ゆうえんち』〈てのひらしかけえほんシリーズ〉(小学館)《ポップアップ》
1.Robert Sabuda『The 12 days of Christmas』
《ポップアップ》
ロバート・サブダは、現在最も知られているしかけ絵本作家だと思います。
誰もを魅了する傑作がたくさんある中で、私の「好き」を選ぶならこの作品。
日本語版では『クリスマスの12日』(大日本絵画)として出版されています。
画像はAnniversary Editionの2006年版(より豪華になっています)ですが、私が持っているのは1996年版です。
20年以上前の本ですが、何度見返しても飽きません。
私にとって、この作品と『The Christmas Alphabet』(日本語版『クリスマス・アルファベット』)がサブダとの最初の出会いでした。
それは衝撃的な出会いで、しかけ絵本を集め始めるきっかけにもなりました。
カラフルな台紙からとびだす白のポップアップの、息をのむ美しさ。
ポップアップでこんなに芸術的な表現ができるなんて、こんな複雑な動きができるなんて、知らなかった!
本文は古い英語の詩。クリスマスの12日間に恋人がくれたものを「梨の木にとまった1羽のやまうずら、2羽のきじばと、3羽のめんどり・・・」と数え上げていきます。
贈り物の数が1つずつ増えていく規則性のある詩を、独自の解釈でドラマチックなポップアップに表現しています。
美しいだけでなく、「制限の中の自由」というべき発想の素晴らしさにも驚かされます。
2.David A. Carter『BLUE 2』
《ポップアップ》
日本語版ではデビッド・A.カーター『あお2ちゃん』(大日本絵画)として知られている本。
有名な『One Red Dot』(日本語版『あかまるちゃん』)のシリーズ、5冊ある中の2冊目です。
5冊とも、オブジェのような迫力あるポップアップがダイナミックにとびだす絵本で、工夫を凝らしたしかけがとってもユニーク。
シリーズはそれぞれにコンセプトがあり面白いのですが、私が一番好きなのがこの『BLUE 2』。
ただ眺めるだけでも見応えがありますが、楽しみ方はそれだけじゃありません。『One Red Dot』の「赤い●」探しと同じく、ポップアップの中から「青の2」を探すのがこの本の趣向です。
これがなかなか手ごわい!『One Red Dot』より難易度は上です。
オブジェを上から、横から、斜めから、いろんな角度から見て探すのはもちろん、ちょっと手を加えないと出現しないものもあり、発想の転換が必要です。
その分、発見したときの喜びは大きい!
さて、私の意見として、お伝えしたいことをひとつ。
小さいお子様はやはり日本語版がいいかと思いますが、少し英語ができる方ならぜひ!英語版を選んでください。
Abundant Blossoms Collide and a hidden Blue 2.
のように、本文は頭文字が「A、B、C・・・」とアルファベット順にZまで続くように綴られているんです!
この素晴らしい技巧が、日本語版では味わえないので。
ちょっと単語が難しく、英語が得意でない方は辞書を引き引き読むことになるとは思いますが、文章の量は少ないので、そんなに負担にはならないと思います。
3.アン・ジョナス
『光の旅 かげの旅』(内海まお訳、評論社)
《だまし絵》
全編白黒の、一見地味な絵本。でも、読んでみれば驚きいっぱいの刺激的な一冊です。
「しかけ」といっても、部品などがついているわけではなく、絵そのものがしかけになっている「だまし絵」タイプのしかけ絵本。
上下逆さになったタイトルや本文がついているのが気になりますが、まずは逆さの文字は無視して、ふつうに読み進めてみます。
明け方、家を出発。農場や麦畑、高速道路や海岸を通って、街へと出かけます。太陽が沈んだ・・・。
ここまでが往路、昼の旅。
最後のページに辿り着いたところです。
ここで本をさかさまにして、反対から読むと、帰りの旅が始まります!
今度は夜の旅。
さっき見たページの、ビルが星空に!波が鳥の群れに!麦畑は雨に!
今まで見てきた風景がガラリと変わります。
「逆さ絵」というのは昔からありますが、こんなに美しく洗練された、見事な物語に仕上げた例はそう無いのではないでしょうか。
ルビンの壺で知られる「図地反転」の効果がうまく使われていて、本が逆さになるとともに、認識もくるりと転換するような驚きを感じます。
エッシャーや安野光雅のようなだまし絵が好きな方、錯視やパズルが好きな方には、特におすすめです。
4.よねづ ゆうすけ『にじいろカメレオン』(講談社)
《円盤、プルタブ》
よねづ ゆうすけさんのしかけ絵本は幼児向けのごくシンプルなものが多いのですが、よく練られた構成で、さりげない工夫がいっぱいで、大人が読んでも面白い作品ばかりです。
中でも、この作品が一番好き。
ページ端についた円盤(ダイヤル)を回すと、カメレオンの「レオン」のからだの色がくるくる変わります!
作品としてはこの円盤しかけがメインという感じがしますが、作中にはプルタブしかけも使われていて、私はそのシーンが大好きなんです。
ヘビが現れてピンチ!という場面、レオンはさっと草の色に変身して切り抜けます。
プルタブしかけの技術としては一番シンプルな、ただ「引っ張った方向に引っ張った分動く」だけのしかけ。
それがこんなにユーモラスで劇的なシーンになるなんて!
全体にカラフルで明るく、元気が出るような絵本。
裏表紙がまた心憎くて・・・。遊び心があふれます。
5.Matthew Reinhart
『Transformers: The Ultimate Pop-Up Universe』
《ポップアップ、プルタブ》
Amazing!という言葉が最もぴったりきます。
すごすぎて口があんぐり・・・そんなポップアップです。
マシュー・ラインハートの作品は、精緻で迫力いっぱいで、目を見張るものばかり。
その中でも、この作品はアイディア・技術ともに飛び抜けていて、驚嘆してしまいます。
この『トランスフォーマー』というおもちゃ、及びそこから派生したアニメを、世代によってはご存じないかもしれませんね。
私も実はあまり詳しくないのですが、アニメは少し見たことがありましたし、周りの男の子がプラモデルで遊んでいたので知っていました。
変形ロボットのバトルもので、乗り物や動物の姿からロボットに変身する場面が見どころ。
それを、この本ではポップアップで再現しちゃっているんです。
車や飛行機のポップアップ。タブを引っ張ると、パーツが広がったり、回転したり、裏返ったりして、ロボットに大変身!
言葉でうまく説明できる気がしないので、動画をご覧ください。
ポップアップをさらに変身させるなんて、そのアイディアがすばらしい。そして、実現してしまう技術がとんでもない。
本当に、アメージングです。
ポップアップ絵本ファンから見ても最高ですが、トランスフォーマーファンにとってもたまらない作品だろうと思います。
残念ながらすでに絶版となっていて、中古市場でプレミア価格となっています。
私も外国のオークションサイト経由で手に入れましたが、たまに安めの掘り出し物もみかけます。欲しい方は気長に探してみるといいと思います。
6.五味 太郎『まどから おくりもの』(偕成社)
《穴あき》
私が子供のころからありました、この本。
五味 太郎さんの絵本はどれも面白くて、数としては一番読んでいる作家さんかもしれません。
しかけ絵本については、3冊だけ出ています。ご本人は普通の絵本の方がお好きだそうで、しかけ絵本はこれきりだそう。
だけどその3冊が、とってもよくできていて楽しい!
中でもこの作品は、クリスマスの絵本として定番人気となっています。
ページにくりぬかれた窓から、家の中をのぞくサンタさん。
ちらっと見えている姿から、誰のおうちか見当をつけて、ふさわしいプレゼントを配っていきます。
だけどページをめくると、家の中には・・・あれあれ?予想と違う動物が寝ている!
サンタさんの勘違いで、プレゼントはちぐはぐに・・・
穴あきしかけの効果を存分に生かした、楽しいストーリー。
”部分から想像したものが、実は違っていた”というのは穴あきしかけの定番の手法で、いい作品はたくさんあると思います。
でも、スマートさ、意外性やユーモア、絵の美しさにおいて、やっぱり私にはこの作品がベスト!ロングセラーにも納得です。
7.エリック・カール
『パパ、お月さまとって!』(もり ひさし訳、偕成社)
《めくり、ポップアップ》
ストーリーしかけ絵本の名作。
しかけが絵本の中で活きているってこういうことなんだな、と思わされます。
「パパ、お月さまとって!」娘のモニカに頼まれたパパは、ながーいながいはしごを、たかーいたかい山にたてて、上へ上へとのぼります・・・
たたまれたページを広げるだけのめくりしかけ、折りたたんだだけの簡単なポップアップ。
ごくごく単純なしかけなのに、「ながーいはしご」や「おおきなお月さま」を鮮やかに表現して、わあ!と歓声をあげたくなるような印象的なシーンをつくっています。
豊かで魅力たっぷりの絵と、夢のあるあたたかいストーリー、そしてシンプルで効果的なしかけが響き合った絵本。のびのびとしたイメージの跳躍力に満ちています。
8.Marion Bataille『ABC3D』
《ポップアップ》
フランスの作家マリオン・バタイユの代表作。
簡潔で洒落たタイトルが、本の特徴をそのまま表しているようです。
名前のとおり、ABC(=アルファベット)が3D(立体)で表現されたポップアップ絵本。
文は無く、本当に「A」「B」「C」…の26文字が順番にとびだしてくるだけのシンプルな本。
色づかいも白・黒・赤だけと、いたってシンプル。
だけど、そのとびだし方がとっても凝っていて、エスプリが効いています。
単に立体というのではなく、見せ方に一癖も二癖もあって、「やられた!」「そうきたか!」そのアイディアの面白さに膝を打ってしまいます。
最小限のものでいかに大きな驚きが生み出せるのかを見せてくれる、知的なひらめきにあふれた一冊。
*もう少し詳しい感想を過去記事で書いているので、よければお読みください。
9.アン・グッドマン/ゲオルグ・ハレンスレーベン
『ペネロペ ゆきあそびをする』
(ひがし かずこ訳、岩崎書店)
〈うっかりペネロペしかけえほんシリーズ〉
《プルタブ》
つまみを引っ張ってしかけを動かす、プルタブしかけ絵本のシリーズ。
かわいいキャラクターに目が行きますが、内容も充実しています。
3歳のコアラの女の子、ペネロペの毎日は発見がいっぱい。
幼いペネロペが1つ1つ新鮮に体験するできごとを、読者も1つ1つしかけを動かしながら一緒に味わうような感覚で読めます。
プルタブしかけ絵本は単純なものが多いという印象をもっていましたが、このペネロペシリーズはしかけがよく練られていて、ちょっとした意外性があったり、同時に何ヶ所も動いたり。
ただ「動く」だけでなく、そこにしっかりと面白さが盛り込まれています。
うっかりやさんのペネロペが元気に失敗するシーンなど、ほほえましくて楽しい絵本です。
シリーズはどれもよくできていますが、くすりと笑ってしまうシーンが多い『ペネロペ ゆきあそびをする』を1番にあげておきます。
*もう少し詳しい感想を過去記事で書いているので、よければお読みください。
10.わらべきみか(絵)/斉藤幸一(ポップアップ)
『とびだす!うごく!ゆうえんち』
〈てのひらしかけえほんシリーズ〉(小学館)
《ポップアップ》
ここまでポップアップ絵本は、外国の、どちらかというと大人向きの作品をご紹介しましたが、日本の幼児向け絵本であるこちらのシリーズもすばらしいです。
てのひらにおさまるくらいの小さな絵本。かわいらしい子ども向きの絵。
ですが、そんな見かけによらず、中身は本格派。技術を駆使した驚きのしかけがとびだします!
テーマに沿った”もの”がページを開くたびにとびだしてくるという構成で、『ゆうえんち』ならば、上下に動く「かいてんもくば」や、くるくる回る「コーヒーカップ」など。これが本当にクオリティ高い。
多彩なポップアップのほか、プルタブしかけや円盤しかけの部分があったりと、細かいところまで子どもたちを楽しませる工夫がいっぱいです。
妥協のないつくりに惚れ惚れ。
丈夫で取り扱いやすく、値段も手ごろ。子どもが日常的に親しめるようつくられています。
『こうえん』『むし』『すいぞくかん』『はな と き』などなど、シリーズのラインナップもたくさんありますが、どれもよくできていておすすめ!
*もう少し詳しい感想を過去記事で書いているので、よければお読みください。
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私にとっての「好きなしかけ絵本10選」をご紹介しました。
1作家につき1冊までと決めて選びましたが、10選となると、やはり有名な作品が多くなったように思います。「これは外せない」というものを並べたらこうなりました。
どれも大好きな作品であり、おすすめしたい作品でもあります。
どなたかの参考になればと思います。
こうしてみると自分の好みの傾向が見えるようで、「考え方の面白さ」を重視しているのかなという気がします。お題に参加してみて発見もあり、楽しかったです。
長い記事におつきあいいただき、ありがとうございました。