Marion Bataille『ABC3D』
まずタイトルがおしゃれ!
中身もとってもスタイリッシュ&エスプリにあふれています。
名前のとおり、ABC(=アルファベット)が3D(立体)で表現されたポップアップ絵本。
こちらは英語版ですが、文は無く、本当に「A」「B」「C」…の26文字が順番にとびだしてくるだけのシンプルな本。
白・黒・赤だけと、色づかいもシンプル。
最小限のものでいかに大きな驚きが生み出せるのかを見せてくれる、切れ味鋭い一冊です。
単に立体というのではなく、とびだし方・見せ方に一癖も二癖もあって、「やられた!」「そうきたか!」と膝を打つことうけあい。
こういう遊び心のある本って私は大好きです!
あんまりネタバレしてしまうと面白さを削ぐので控えめに語りますが、C・Dとか、O・P・Q・Rの並びとか、V・Wとかの「順番」をうまく使った表現など秀逸です。
日本語版(表紙だけの違いのように見えます)について、絵本ナビのサイトで写真が紹介されていましたので、リンク先を見ると雰囲気が伝わるかと思います。
日本語版は大日本絵画から出ていて、現在は英語版より安いです。
でも、表紙に「ポップアップ見本帖」と印刷されていて、ちょっと野暮ったい…と正直思います。
せっかくの洗練された本なので、英語版で究極のシンプルを味わう方が私としてはおすすめです。
英語版は以前と版が変わったようで(出版社も違う)、現在販売されているものは、冒頭の写真のように表紙デザインが違います(私が持っている古い英語版は日本語版とほぼ同じデザイン)。
この新しい英語版は、表紙がレンチキュラー印刷(見る角度を変えると絵が変わる)になっていて、ABCDと変化するようです。そのプレミアム感も含め、英語版は魅力的です。
実は、著者の公式サイトで全編公開した動画があります!
でもあえてリンクは貼りません。(見たい方は ”Marion Bataille”で検索してみてください)
歌入りでおしゃれな動画ですが、動きが早送りでせわしなく、何だか魅力が伝わりにくいように感じるのです…。先に動画で内容を知ってしまうのはもったいない。
やっぱり実物を見て、その驚きを味わっていただきたいです!
なお、バタイユのポップアップにはほかに、丸と直線(0と1)と平行折りしかけ(ごく基本的なしかけ)のみで10までの数字を形づくる『numéro』(日本語版『ナンバー』)、数字がくるりと別の数字に変化する『10』があり、いずれもシンプルで知的な面白さがあります。
こちらもおすすめですが、少し地味でマニア向けな気もするので、最初の1冊ならやはり『ABC3D』が最適かなと思います。