絵/わらべきみか ポップアップ/斉藤幸一
小学館のてのひらしかけえほんシリーズ。
名前のとおり、9cm×8cmのてのひらサイズ、かわいらしい絵のミニ絵本です。
ですが、「幼児向けのたわいない絵本でしょ?」とあなどってはいけません。
技術をふんだんにつめこんだ、驚きのしかけがとびだします!
私にとっては日本のポップアップ絵本のいちおしといっていいシリーズ。完成度が素晴らしいのです。
例えば「小さい子どもにおすすめのポップアップ絵本を紹介して」と言われたとしたら、まずこちらを推します!
ストーリーものではなく、テーマに沿った「もの」が列挙され、見開きごとにとびだす形式です。
『ゆうえんち』ならば「かいてんもくば」「コーヒーカップ」「ジェットコースター」などのアトラクションが次々にとびだしてきます。
表現のバラエティが豊かで、1つめくるごとに歓声をあげたくなる仕上がり。
↓ 小学館のサイト(リンク先)で試し読みができます。
「とびだす! うごく! ゆうえんち」|遊べる本&絵本|こども|書籍|小学館
試し読みは静止画なので伝わらないですが、「かいてんもくば」なんか、動きがほんとにメリーゴーラウンドなんですよ。
木馬がいったん下がって上がっていく。何度見てもため息がでます。はー すごい…
「コーヒーカップ」のくるりと回るしかけも、ぜひ見ていただきたいです。
シリーズはほかにも『すいぞくかん』『むし』『はな と き』『どうぶつ』『サーカス』『ぼくじょう』『のりもの』などたくさん。
とびだすだけでなく、めくりしかけやプルタブしかけがついていたりと、楽しい工夫があちこちにあります。
斉藤幸一さんの設計がしっかりしていて、紙も丈夫で滑りがよいので、ページの開閉がとてもスムーズ。壊れる心配が少ないです。お出かけに携帯しやすいのも◎。
わらべきみかさんの絵も、かわいらしく見やすく、自然に笑顔になってしまいます。
細かいパーツにもちゃんと絵がついていたり、丁寧に仕上げられていることにも感動。
シリーズのどれも好きですが、私が1番気に入っているのが今回とりあげた『ゆうえんち』です(今見たら在庫品薄みたいですが、増刷かかることを願います)。
ほかに、しかけが凝っていて見ごたえのあるのは『すいぞくかん』『サーカス』、画面が楽しいのは『むし』『はな と き』『ぼくじょう』『うみのいきもの』かなと思います。『こうえん』も驚きが大きくて好き!(どれも捨てがたく、おすすめを絞れない…結局全部いいです 笑)
このシリーズは版を重ねるときに何度か値上げしているようで、現在税込858円。何年か前に買ったものは524円+税と驚愕の安さでした。でも今のお値段でも、内容に対しては高くないです。
小さい子向けの廉価な本でこれだけのクオリティのものをつくるなんて、ものづくりとして本当に素晴らしいなーと、感じ入ってしまいます。
ロバート・サブダさんの本のような「そーっと大切に見たい芸術作品のような本」も心踊りますが、この本のような「子どもが日常親しめる実用的な(少々雑に扱っても大丈夫な)本」にも、同じくらい拍手を送りたいです。