今回ご紹介する本は絵本ではない・・・いや広義では絵本かな?まあ少なくとも、いわゆる絵本らしい絵本ではありません。
漢字についての洋書で、ジャンルとしては学習本。
多少の英語力が必要なので、子ども向けでもないと思います。が、童心にかえってわくわく楽しめる本!
本の概要:外国人のための漢字学習本
Michael Rowley『絵で見る漢字―KANJI PICT・O・GRAPHIX』
(IBCパブリッシング,2011)
(画像はAmazonへのリンクです)
流通上の書名としては一応日本語の題がついていますが、本自体は全編英語の洋書です。
副題(?)の「OVER 1,000 JAPANESE…」を直訳すると、「1000を超える日本の漢字とかなの記憶法」という感じでしょうか。
そう、外国人向けの、漢字(とかな)を覚えるための本です。
たぶん、日本の漢字を覚えたい外国人向けのまじめな本なのだと思います。
だけど日本人にとっては・・・すばらしいユーモア本、楽しい遊びの本に見えます!
ちなみに、Amazonで見ると別の版があります。
Michael Rowley
”Kanji Pict-o-Graphix: Over 1,000 Japanese Kanji and Kana Mnemonics”
(Stone Bridge Press,1992)
(画像はAmazonへのリンクです)
実は両方持っているんですが、IBCパブリッシングのは、Stone Bridge Pressのものにカバーをつけているだけのようです。内容は同じ。
現在の価格ではIBCパブリッシングの方が安いようです。
私が最初に買ったのはカバーなしの方、大学生のときで20年くらい前です。
今でも売っているなんてうれしい、人気のある本なんだなあ!
学習用の記憶法=楽しい文字遊び
表紙を見てなんとなく趣向がおわかりになったでしょうか?
「止」という漢字の形を「おまわりさんが人を制止している絵」で表現しています。
形と意味が結びつくので、覚えやすい!
このような感じで漢字を絵で表現し、覚える手助けとしているのです。
日本の私たちは、一部の漢字が「象形文字」であることをよく知っています。
「魚」は魚の絵から変遷して…というような図を漢字辞典で見たことがあるかと思います。
しかし、この本は必ずしも歴史的な「成り立ち」をなぞって絵にしているわけではなく、覚えやすい・納得しやすい絵を独自につくっています。
「止」だって、字源としては「足跡」を象ったものだそうですが、変化しすぎて今の漢字の形と足跡のイメージが重ならない。「おまわりさんが人を制止」の方がずっと覚えやすいですね!
この調子で、象形文字でない漢字も絵として覚えられるように仕上げています。
その当てはめ方がなんとも面白い。
本来学習用の本だとしても、日本人が見れば、文字遊びの見本帳として大いに楽しめるのです。
こちらは裏表紙の画像。
「湿」は意味と形を見事に表しています。
「大」はいわゆる「大の字」に近くてわかりやすいですね。
「小」は地味ながら技あり!の発想。
1,000字以上が、このような工夫あふれる絵で表現されています。
もちろん1,000字といっても、漢字は部首の組み合わせであるものが多いので、部分的に重複する絵も多くなります。1,000種類の絵というわけではない。
それでも、200ページを超える厚みの本にずらーっと絵文字が並ぶのは、なかなか壮観。
これだけつくるのは、すごい努力だと思います。
見応え充分、たっぷり楽しめますよ!
なお、ひらがなとカタカナも載っています。
こちらは形と音をリンクさせていて、漢字同様、もしくはそれ以上に秀逸!
↓↓ もう少し見てみたい方は、Amazonの商品ページに試し読みがあります。
ひらがなとカタカナは大部分見られます!
Kanji Pict-o-Graphix: Over 1,000 Japanese Kanji and Kana Mnemonics
「なるほど!」「まさにぴったり」「よく思いつくなあ」「すごいこじつけ…」などと、ひとつひとつの絵文字に感心したり、笑ったり。
説明文にもユーモアがあったりして面白いです。
日本の子どもたちの漢字学習に役立つかというと・・・たぶん普通に反復練習した方が早いと思いますが、大人の知的な遊び心を満たすにはとってもいい本。
暇なとき1人でめくって楽しむもよし、誰かと一緒に面白がるもよし。
漢字がもっと好きになる1冊です。